蒲公英
その日、河南子は僕の家に遊びにきていた。

部屋で来る途中に買ったという新しい詩集を読んでいる。






僕はといえば、先週からどうにも調子が悪いDVDプレイヤーと格闘中。

男が機械に強いなんていうのは迷信だ。

どれだけ説明書と睨めっこをしてみても、僕にはどの配線がなんの役割を果たしているのかさえ皆目見当がつかない。






無駄に疲れてふと窓の外を見上げてみる。

雲はあれども、太陽が穏やかに照りつける晴れた日曜日。

絶好のおでかけ日和にふたりそろってなにをしているんだという気がしないでもないが、つきあいが長くなれば家でのデートが増えるのも自然の流れだ。

決して手を抜いているつもりはない。

時折河南子が口にする言葉にてきとうな相槌を打つ。

そんな穏やかな午後が好きだった。






だけどその日河南子が口にした言葉は、僕のお得意の相槌なんかでは済まされない、真剣さを纏ったものだった。
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