蒲公英
もう完全に痴話喧嘩だった。

マスターは放っておけと僕らだけに新しいお酒をつくってくれた。




「初めて大樹の家に泊まったとき。一緒に寝て、腕枕しながら頭なでてくれてさ?私…、幸せだと思った。大好きって言いたかった。なのに大樹、目が合った瞬間そっぽ向いて言ったじゃん。もうやだな、って…。そう言ったじゃない!」

「…は?や、お前バカじゃねぇの!?」




大樹は本気で驚いたらしく、しばらく呆けた後、顔を真っ赤にして叫んだ。

今さらながら、他にお客さんがいなくて本当によかったと思う。




「やだって、あれはちがうだろ!」

「なにがちがうのよ?ヤるだけヤってあとは用済みみたいに言われてっ!私がどれだけ傷ついたか分かってんの!?」

「ちがっ!」

「嫌ってやろうと思ったのに…。それすらできなくて。ずっと、苦しかった」

「だからっ!…もう、なんなんだよ。お前、どれだけ俺の話聞いてねぇんだよ…」

「え?」
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