蒲公英
突然大樹があかりを抱きしめた。

力が抜けて寄りかかったといった方が正しいかもしれない。

どちらにしろ、急展開だ。




「確かに言ったよ?もう嫌だ、って。あかりのことばっか考えて、一瞬たりとも離れられなくなりそうで。情けなくて嫌だよなって。…そう言ったんだよ」

「嘘…?」




あかりがぽつりと呟く。

長年のふたりのつきあい方は、その誤解がトラウマになっていたらしい。






それでも離れられずにいたふたりは、どんな想いでこれまで笑いあってきたのだろうか。

考えるだけで少し切なくなった。




「もうない?」

「え?」

「俺がお前を傷つけたこと、他にはもうない?」




大樹が聞く。

あかりは小さく頷いた。




「そっか…」

「大樹。あの…、ごめんね?私…」

「次の日が、初めての別れ話だったよな?やっぱり情けない俺じゃ嫌なんだって言われた気がした。だからずっとあかりの前では背伸びしてきたけど…。でも、そうじゃないんだよな?」

「ごめん…」

「いいよ。伝わってよかった」




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