蒲公英
僕らの方を向いている大樹の表情は、今まで見たことがないほど穏やかだった。

抱きしめられているあかりの顔は見えなかったけど、やっぱり泣いているんじゃないかと思った。




「結婚、しないで」

「うん」

「俺ともう一回、ちゃんとつきあって?」

「うん…」

「もう簡単に別れるなんて言わないで」




あかりはもう言葉さえでない様子で、ただ必死に首を振っている。




「好きだよ。これからはちゃんとお互いの気持ち伝えていこうな?頼むから、これ以上俺を不安にさせんなよ」

「好き。ずっと、ちゃんと好きだった」




友達のそんな会話、聞いてるこっちが恥ずかしくなる。

なんで僕が赤くならなきゃならないんだと理不尽に思いながら酒を煽っていると、僕以上に真っ赤になった未来がたまりかねて立ちあがった。




「お前らいい加減場所を考えろよ!場所をっ!」




そっと視線を戻せば熱い口づけを交わしているふたり。

僕は思わずこめかみを抑えた。

だけど大樹はホテルじゃねぇんだぞなんて言われながらもしれっとしている。




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