蒲公英
「ごめん。二度と来ないで」




それだけ言うと、僕は逃げるようにその場を去った。






真弓の頬に、一瞬だけ…、キスを残した自分がいた。






やましい気持ちがあったわけじゃない。

浮気心なんて欠片もなかった。

最後の挨拶のつもりと言ってしまえば、どこのプレイボーイだなんて言われそうだけど。






ただふっと懐かしさが込みあげて。

本当に、ただそれだけだったんだ。






もちろん誰にも真弓のことは話さなかった。

知られるはずがないと思っていた。

なのに…。






翌朝目覚めた僕の隣に…、沙羅はいなかった。
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