蒲公英
マスターは真っすぐに僕を見つめたまま、まだ口もつけていないモスコミュールのグラスを床に落とした。






―ガシャンっ!






「ちょっ!なにやってんだよ!?」






あきらかに故意だった。

僕は驚いて立ちあがる。






割れたグラスが僕の心臓を鷲掴みにしている気がして。






だけどマスターは目をそらさない。






「愛海」






いつも以上に厳しい声。






…僕はすべてを理解した。






―俺にとっては沙羅が神様だから。沙羅の言葉ならなんでも信じられる。沙羅は俺の、すべてだから…。











「信じられなかったお前の負けだ」











マスターは…、僕の心の中の蒲公英を壊したのだ。
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