蒲公英
僕は…。

そう。

自分を確かめに来たのだ。






どれだけ沙羅を愛していたか…。






それを知らなきゃ、僕はいつまで経ってもここから動けはしない。






「…忘れるつもりなのね」






稀沙がいつもの勘のよさを見せた。

僕は黙って微笑み返す。

みんなの顔にさっと悲しみの色が浮かんだ。






「だめだよ…」






あかりが涙を流してくれた。






「沙羅が…、泣いてるよ?」






春日も激しく泣きはじめる。






「湧己が忘れちゃったら…。沙羅はどこに帰ってくればいいの?沙羅、寂しくって泣いちゃうよぉ!」






わぁっと僕に抱きついて春日は泣きじゃくった。

僕は抱きしめてやることもできずにそっと未来の様子を窺いみる。

さすがの未来もこの日ばかりはなにも言おうとしなかった。
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