KISSのお味

――
―――


 コンコン。

 聞きなれたノックが二回。

「ふぁ~い。」

 ヘアピンを数本、唇で挟み込んだまま。

「用意できたか?そろそろ遅刻しちまうよ。」

 応えることなく鏡の前に座るのを見て、左の眉を少し上げた。

「またか…何時になれば、髪ぐらい結えるんだ?」

「頑張ったもん。」

 左手で頭を押さえていたのを離し、ヘアピンと右手のゴムを合わせて差し出す。





「お願い?」

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