うそでも良いから欲しい言葉
だからある日の放課後、思いきって彼に思いを伝えた。

だけど彼は思いっきり顔をしかめ、一言。

「―俺はお前のこと、そういうふうには思えない。いや、一人の人間としては尊敬できるヤツだし、俺の片腕としては信用もしている。だけど恋愛感情としては…好きじゃない」

困ったように、泣きそうな顔で言われた。

だから僕は苦笑し、

「分かりました」

と、彼の返答を受け入れた。

だからその後、自分の思いを口に出すことはなかった。

それから数ヶ月の時が過ぎ、春休み、生徒会の集会の後で、言い出したことだった。

「ウソでも良いんだけどな…」

もうすぐエイプリルフール。

ウソをついても良い日というのは、僕にとっては好都合だった。

彼にとっても都合がいいと思ったんだが…やっぱり難しいか。

なので4月1日は、1人で出かけることにした。

大学受験も始まるので、電車に乗って塾の下見に行った。

3つの塾を回ったところで、すでに昼過ぎになっていた。

コンビニで昼食を買って、公園で食べようとした時、ケータイが鳴った。

表示を見ると…彼からだった。

「はい、どうしました?」

『どうした?じゃないだろう! どこにいるんだ! お前!』

「えっ? どこって、外です。外出しています」

『地元にいないのか?』

「ええ、塾の下見に街中まで来ましたから」

彼の興奮した声に、少し驚いた。

あまり動じない性格だと思っていたから。

「それでどうしたんです? 生徒会の仕事のことですか?」

彼と僕の共通点は、そのことぐらいしかない。

あの告白後から、彼からは一定の距離を置かれているから。
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