うそでも良いから欲しい言葉
「うしっ! 何かスッキリしたし、昼飯食べに行くか」

「まだ食べていなかったんですか?」

「お前を待ってたせいでな。すっかり夕方だ」

確かに窓の外は夕日の色に染まりつつあった。

「せっかくだから、花見に行くぞ! 待たせた罰として、お前のオゴリな!」

そう言って嬉しそうに僕の手を引く彼を見て、思わず笑みを浮かべた。

「…分かりました。気の済むまで食べてください」

「おうよ!」

楽しそうに屋台のことを語り出す彼を見つめながら、ふと一つの言葉が思い浮かんだ。

『嘘から出た実』

―嘘のつもりであったものが、結果的に、はからずも真実となること―

…彼のあの言葉が、いつか現実となることを、願わずにはいられない気持ちだった。
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