アナタの笑顔は私の特権。
朔楽君、一人暮らしって言ってたけど、お父さんがいなかったからかな…。


あれ、お母さんは?


「帰らないで…」

朔楽君はそう言って、私を抱きしめた。


「…朔楽君…」

初めて聞いた。
朔楽君の辛そうな声。
初めてだ。
私に何かを望むなんて…。



「……わかった。家族の人は?」


「いない。兄貴と母親は海外だから」

「海外?」

「……母親は離婚したあと仕事で海外に行って、兄貴は留学で母親のとこにいる。」


「……そっか」

朔楽君の見せなかった一面だ。
寂しさとか弱さを隠してたんだ。


帰るに帰れなくなった私は、朔楽君の家にいることにした。








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