紙ヒコ―キ
泣かないようにと唇をギュッと噛みしめる。
その時、葵の手があたしの手を握った。
「安心しろ。俺がいる。」
そう言って、真っ直ぐな瞳に見つめられた。
「…聞いてほしんだろ。全部受け止めてやるから、話せ。」
葵の言葉は、あたしに安心をくれた。
「……あたしは押し入れに閉じ込められたの。開けてお母さんを助けなきゃって思ったけど、開かなくて。2人の名前を泣きながら呼んだ。…暗闇の向こうからは、お父さんの怒鳴り声と、お母さんの叫び声だけが聞こえてた…ッ。」
お母さんの叫び声を、あたしは忘れる事なんて出来ない。
「その後すぐ…2人の声が聞こえなくなった。何で、って思ってたら、何かが倒れる音がした。怖くて、怖くて仕方なかった。そしたら少しして、押し入れの前で音がしたの。あたしはドキドキしながら、息を潜めてた。」
今思えば…お母さんがどうなったのか、分かってたんだと思う。
…だから、自分も同じようになるんじゃないかって、息を殺してた。