紙ヒコ―キ



「…だけど、お父さんは押し入れを開けなかった。代わりに、玄関の扉が閉まる音がしたから、あたしは押し入れから慌てて出た。その瞬間、あたしは絶句。」





泣いてたのに、その光景を見て、泣くのも忘れた。





「見えたのは…真っ赤な血。それから…倒れてるお母さん。胸には包丁が刺さってた。」





…あたしは、血が嫌いになってしまった。





ほんの少しの血を見ただけで、気分が悪くなって、吐き気がしてた。





…だって、嫌でも、思い出してしまうから。





「それからの記憶はあまり分かんなくて…。でも、おばあちゃんの家にいた。」





おばあちゃんは、あたしにずっと優しかった。




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