紙ヒコ―キ



“アイツ”って…。亡くなった彼女の事だよね。





葵の口からは、彼女のこと聞きたくないけど…





でも…聞いてあげたい。





あたしに聞いてほしい、って葵が思ってくれるなら…。





「中学に入ってからは、楽しかった。周りにはいつも友達がいたし。…でも、女には興味なかった。“付き合う”って、面倒くさいことだと思ってたから。だから、女からの告白は必ず断った。」





真里子さんから聞いたのと同じだ。





「だけど、俺目当てじゃない女とは、普通に仲良かった。って言っても、数えれるくらいしかいなかったけど。……アイツと会ったのは、中2のクラス替え。俺と一緒のクラスになれて喜んでる女子ばかりだったのに、アイツだけは、…違った。」





そう言って、切なそうな顔をする葵。





葵の見ている人は、あたしじゃなくて…亡くなった彼女。





……そう思うと、胸が、痛い。





「俺を見た瞬間、イヤそうな顔してきた。そんなヤツ初めてで、正直驚いて。それから、ソイツの事が気になり始めて…、告った。」





葵から告白したんだ…。当たり前だよね……。





「てっきり断られると思ったけど、Okされてさ。で、付き合う事になった。すぐにその情報は学校全体に広がったけど、あまり気にしてなかった。俺が、いつもアイツの傍にいたから。絶対に俺が守ってやる、って思ってた。だけど……」





そこで葵は話すのを止めてしまった。





まだ、好きなんだもんね…辛いよね……。





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