空き瓶ロマンス



……大変な事になった。
 
修は、無言で帰宅してきた倫子に、びくびくしていた。

前は必ず、「ただいま」を言っていたのに……。
 
しかし、それでも勇気を出して「おかえり」と言うと、

倫子にぎろりと火花が散るような眼で睨みつけられた。

(これは……本気だ)
 
こんな遣り取りが、もう何日も続いている。
 
お陰で今は、自分の衣類の洗濯は一応してくれてはいるものの、

パンツから靴下に至るまで、何もかも全部が裏返しに畳まれている。

いちいち戻すのが面倒で、忙しい朝などは特に恐ろしい。



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