空き瓶ロマンス



『ええ、私もあなたを愛しているわ』

『私の恋人は、あなただけよ』

……だがそれは全て、麻薬を常用しているその男の幻想で、

少女の正体は死体だった、という劇だ。

『少女』が腐り始めるのをきっかけに、

男は正気に目覚める。

しかし、男は薬物依存の苦しみに耐えかねて、

死を選ぼうとする。

そうして、最後に毒薬を煽って死ぬというラストだ。

だが実は、少女の『声』は男の望んだ言葉そのもので、

男が倒れた瞬間、ぱっと消えた照明の中、

ぽつりと『生きて……』という少女の声が寂しく響く。

そんな、悲劇でもあった。


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