空き瓶ロマンス
再び溢れそうになった涙をぐっと堪えて、私は短く呟いた。
そして走り出す。もう泣かない。
とても急でしかも歪んでいる階段を、一気に駆け下りた。
途中、右の足首がちょっとぐきっていったかもしれないけど、
そんなものに構っている余裕は無かった。
急いでローファーに足を突っ込んで、通路に出る。
体育館の脇を走り抜けて、辺りを見回す。
こんなにも短い距離なのに、もう息が上がっている。
もう、いないんじゃないか。
そう思ったら怖かった。
逃げたのは自分なのに、また離れ離れになるのが本気で怖かった。
ほつれた髪。埃まみれのゴスロリ崩れ。
足元は擦り切れた、ださい学校指定のローファー。
とても、好きな人に会いに行く格好じゃない。
だけど、今しかない。
校庭まで走る。……けど、いない。
頼もしいくらい背が高く、がっしりとした人は、いない。