空き瓶ロマンス
私はまた走り出した。あても無く別の場所へ。
どこに行けば会えるんだろう?
迷子を探すのって、こんな気分?
――迷子は私かもしれないのに……?
学校の敷地内をぐるぐると走り回って分かったのは、
迷子も、迷子を探す人も、同じくらい不安だという事だった。
――どこかへ行ってしまった?
――どこにいるの……?
ねえ神様。私かくれんぼなんてしたくない。鬼ごっこも。勘弁して。
わがまま言ってごめんなさい。
だけど、逢いたいの。
優しいあの人に、もう一度、逢わせて……。
「倫子」
ふと、名前を呼ばれたような気がした。
立ち止まって、振り返る。
その先には、私と同じように息を切らせて、私と同じように泣きそうな顔をしている大人がいた。