空き瓶ロマンス
来し方、行く末
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一人、彼は夜中にお茶を飲みながらぼんやりと、妻が出て行った夕方の事を思い出していた。
宵越しに茶を飲むな、という言葉は知っていたが、どうせ眠れそうになかった。
普通、こういう場合に多くの人は自棄気味に酒を呷るのだろうが、彼は下戸だった。
ちょっとそれが情けなくて、自嘲する。
離婚したのはもう、十年以上……というより二十年近く、の方が正確だ――つまりは倫子の歳と同じだけ、前の事になる。
それきり彼は、他の誰とも一緒にならないでいる。
妻とは、学生時代に知り合った。
同じサークルで、お互い若かった。
何も考えないうちに本気周りが見えなくなって、簡単に結婚してしまった。
浅はかだったと、今では言える。