空き瓶ロマンス
とっさに、言葉が出なかった。
同時に泣き出した赤ん坊二人。
指をくわえて、不安げにこちらを見上げる修。
背を向けた彼女を引き留める事も出来ず、あまりにも簡単に、双子の運命は別れた。
倫子には、言っていない。
三人いた鳩羽家の子供のうち一人は、母親が連れて行ったとしか。
それが倫子と双子だったと。
お前には、同じ日に産まれた兄だか弟だかがいるのだよ、とは。言っていない。
産まれる前から一緒にいた彼等が、自分達の勝手な都合で引き裂かれたというのは、
当事者にして元凶である自分の口からは言えないくらいに、あまりにも、残酷だったから。
「ひどい、事だ」
彼は、空になった湯飲みを見つめて呟いた。
かつて、赤ん坊を抱きしめながら、途方に暮れたあの夕方のように……。