空き瓶ロマンス
「いや、お前は俺に似てるな、と思って」
「そうかな」
「似てるよ」
「ふうん」
容姿という点では、修は自分によく似ている。
けど、口が良く回るという点では、あまり似ていない。
どちらかというと、口が重い性格は倫子が継いだようだった。
しかし、倫子の容姿は……。
「ねえ、父さん。今なに考えてる?」
修が、テーブルに湯飲みを置いた。
「いや、大したことじゃない」
「その割には。眉間にシワが寄ってるけど」
「うん? そうか」
「ねえ、あのさ……倫子の事なんだけど」
修は、ちらりと天井を見た。
そのリビングは、倫子の部屋の真下だった。
しかし、今は真夜中だし、会話の声はそれなりに小さい。
倫子が床にコップでも当てて盗み聞きしていない限り、聞こえる事は無いだろう。
「俺ね、もういい加減……裏返しにされた服や下着を、いちいち戻して着るの疲れた」
「ああ、そうだな」