空き瓶ロマンス
それは、倫子が怒った時にやる二人に対する嫌がらせだった。
脱いだものを割箸で捨てられたり、そのまま箪笥に突っ込んである、
という事は無いものの、なかなかに手の込んだ嫌がらせである。
「でもさ……よくよく考えないでも、今回の事は、俺が悪かったと思ってるんだ。
うっかり口を滑らしたから」
「いや、そんな事は無い」
父親は、そう断言した。
修の表情が、曇る。
「まだ……倫子は高校生なんだ。
お前が報告してくれた事は正しい事だし、感謝もしてる」
「だから、それが間違ってるんだってば」
彼は、つい語気を荒げた。
「本当は、倫子だってこの事に関しちゃ、めちゃくちゃ慎重になってたんだ。
最初は、断ろう断ろうと、必死だった。
これって歳の割にかなり、常識的な判断だと思うよ。
何せ相手は大人だ……前に恐竜展に俺がついてったのだって、倫子から言い出したんだし。
だけどね」
ぽつりぽつりと、雨樋を水滴が叩き始めた。