空き瓶ロマンス
「だって、家の事任せっきりじゃん、倫子に。
倫子がへそ曲げただけで、家の中はこんなにも正常に機能しないんだよ?
それを、倫子が見捨てるわけない……」
その日の夕方、修は台所で何かをしかけていた倫子を目撃していた。
何かを作るべきか、やめてしまおうか。
うろうろ迷っているうちに倫子と修は目が合ってしまい、咄嗟に倫子は逃げてしまったが。
「倫子は、無責任じゃないんだ。
多分……ここまで話が捩じれた事に、後悔もしてる。
でも、言い出せないんだよ。
口下手で、変にプライド高くて、恥ずかしがり屋だから……父さんみたいに」
修は、悲しそうな顔をしていた。
ずきりと胸が痛むのが分かった。
子供に辛い思いをさせてはいけないと、誓ったはずなのに、今のこのザマは何だ、と。
「……俺もこの歳だし、それなりに家の中こっそり漁った事あるし、何となく想像つくんだけどさ」
修は、父親を見た。
「……父さん。倫子は、母さんじゃないよ」