空き瓶ロマンス
以前、物置の奥にしまわれていた古いアルバム。
好奇心から開いたその写真の中には。
若い頃の父の隣で微笑む、倫子そっくりの女性がいた。
それが母親かどうかなんて、一発で分かった。
「倫子はさ、物心ついた時にはもう、当り前に家事をこなしてて」
「…………」
「成長していくに連れ、料理のレパートリーも増やして、
洗濯とか掃除も、それなりに出来てさ」
「…………」
「でも、努力してないはずが無いんだよ。
同い年の子に比べても、随分遊ぶ時間だって少なかっただろうし。
……そりゃ、ちっちゃい頃は、俺も親父も何かしら分担してたけどさ。それでも」
修は、遠くを見つめた。
「倫子は、優しいんだ。可哀想なくらいに」
家に縛られてる、という言い方は。
きっと倫子自身望まないだろうが、今はそれに近い感じだった。
だけど倫子はそれすら受け入れて、家族のために自分の時間を削る事を厭わない。