空き瓶ロマンス
「そんな、倫子だもん……間違いなんて、起こりっこないよ、父さん。
許してやって、この事。ちゃんと、倫子に伝えてさ」
さっきまでぐるぐるしていた頭の中が、今は妙に冷静だった。
子供達は、自分が思っている以上に、成長してくれた。
状況をよく読める修。
近所のセントバーナードに吠えられて大泣きしていた頃は、まさか仲裁が出来るようになるとは思いもしなかった。
そして、何もかもよく頑張ってくれる倫子。
喧嘩中以外、嫌な顔一つせず、全ての家事をする。本当に、良い子達だ。
でもだからこそ、他の誰かにくれてやりたくないという気持ちも働いてしまうが、
きっとそれは彼等にとって、とても無様で厄介な事なのだろう。
今やっと、答えが出せた気がした。
「あとね、父さん……倫子の双子の片割れの事なんだけどさ……」
修は、目を伏せて言った。
「驚かないで欲しいんだけどさ。
今日俺のとこに、弁護士だか何だかって人が来て……会ったんだ、俺。
――母さんに……」