空き瓶ロマンス
 


それが、決定打だった。

「私……いや、『俺』って言うべきかな」
 
チャーキーは、初めて人前でその一人称を使った。

千鳥が安心したように、ふうっと溜め息を突く。

「……変だと思ったんだ。あんな叱り方。

この前倫子がさ、その……ああいう事になった時、

あんた真っ先に倫子庇うと思ったのに、全然違う事言うんだもん。


……それにチャコ、あの人の気持ちが分かる、みたいな事言ったじゃん。


……何で、分かるんだよってさ、引っかかってたわけ」



「……初恋。倫子だった」

「ちょっ、……もう、いきなりね」

「いいから聞けよ。二度と話さないから、耳の穴かっぽじってよーく聞きな」

「はいはい」
 
チャーキーは、静かに語り出した。

生れて初めての告白だ。


物心ついた時から、自分は何か違うと感じていたこと。

『多くの人』がそうであるように、ランドセルが赤いのも、女子トイレに入るのも嫌だ
った。

女子トイレは個室だからまあ、女子が男子便入るよりは抵抗無いかもしれないけど。


それと毎回、修学旅行では生理って嘘吐いて、部屋風呂使ってた。皆と同じ風呂入るとか、ある意味拷問だ。


でも、本当の生理はマジで苦痛だった。

毎月毎月、体が自由にならないし、パンツの中は血まみれだし、下腹は痛いし。

……軽い方だとは思うけど、それでもやっぱり胸は痛いほど張るし、何より気持ち悪かった。


自分はこんなんじゃないって、ずっと思ってる。

でも、まさか女子校に来るなんてな……。



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