空き瓶ロマンス
 


席を立とうとした私を兄が制し、ペッタカペッタカ小走りで足音を響かせ、ケチャップを差し出してくれた。


「ほい、ケチャップ!」

「……お兄ちゃん」

「何?」

「変だよ」

「……何が?」

「行動も、言動も、態度も……」
 
今まで、こんな事兄が自ら買って出る事は無かった。
 
だからひたすら、私はさっきから違和感ばかりを感じている。
 
すると兄は、頭を掻きながら、困ったように笑った。


「んー、一応これ、謝ってるつもりなんだよなぁ、ぶっちゃけると。

……今回の事、引っ掻き回した張本人は、やっぱ俺だと思うからさ」
 
今回の事。
 

父の「交際認めません発言」により私がブチ切れて勃発した、大喧嘩。
 
もとい、私の家事のストライキ。(洗濯以外)
 

これまで、無関係そうな顔してた兄からこんなふうに歩み寄ってくるなんて、本当に驚きだった。



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