空き瓶ロマンス



いや、正確には二度目か。
 
兄は、私に先に謝ってきた。あの時、私はそれを冷たくあしらったけど。
 
私は、敵意を丸出しにして、何日もまともに口を利かなかった。

兄はきっと、ずっと傷付いていたのだ。

多分、こんな事になるなんて思いもしなかったから、私と十郎さんの事を、父にうっかり言ってしまったのだとも思った。
 
私は、兄から目線を外してグラスに口を付けながら、言った。

「……お兄ちゃん」

「なーに?」

「………ごめんね」

「うん」
 

兄は、ぽんぽんと私の頭を軽く叩いた。
 

もう、いつまでも子供扱いだなあとうんざりしながら兄を見たら、

兄がとても嬉しそうに微笑んでいたので、何も言えなくなった。



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