空き瓶ロマンス
「うーん、そんなもんかな……」
「そんなもんだよ」
「ふうん。私はてっきり」
私は、トーストを齧った。
「『お母さん』みたいに、思われてるのかと思ったよ」
兄が固まった。
「お父さんと、お兄ちゃんと、私を置いて、
浮気相手の男の人のとこに行っちゃった、不実な人……。
そういうのと重ねられてるのかな、とかちょっと思ってたから、自分でも気付かないうちに、余計イライラしてたみたい。
もちろん、単に分かり合えない、っていう事が辛いってのもあったけど……どうしたの?」
兄は、何かを思いつめたように、じっとこちらを見つめていた。
「お兄ちゃん?」
「……なあ、倫子」
「ん?」
「『お母さん』が今、何してるか、知ってるか……?」