空き瓶ロマンス
 




『母さんに会ってくれ』


 
喧嘩を和解した朝、突然兄は私にそんな事を言った。
 
もちろん私は最初、嫌だと拒否した。

だって今更、会って何を言えっていうの。
 
母に対する恨み言は、考え出したらきりが無い。
 
けれども兄は、その時リビングを飛び出そうとした私を押さえ付けて、必死に言ったのだ。

「急がないと手遅れになるかもしれないんだ」と。


(何が手遅れだっていうの?)

(今まで、一度も会いに来なかったっていうのに、どうして今『急いででも』会わなきゃならないの?)

(会いたくないよ……そんな勝手な人とは……!)
 


――母さんは、もうすぐ死んじゃうんだ!



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