空き瓶ロマンス
もしいたとしても、彼は言えなかっただろう。
みちるは、優しい子だ。
何も悪くないのに、原因を自分に求めてしまうくらいに。
私の将来を勝手に操ろうとしたのだって、結局は彼の夢想に終わっている。
可愛いものだ。
だって私は、斎藤君――宗太君から、そういうアプローチを受けた覚えが無い。
もっともそれは、私が最近、あまりバイトに行っていないからというのもあるけど。
「僕は、……会いたかった……会いたかったんだ。
僕の半身……もう一人の、君に……。
こんな形で、会えるなんて思ってなかった……
血の繋がった、兄さんと、姉さんに……」
今の発言は、実質的には血の繋がっていない宗太君にとって、
あまり良いものではなかっただろうけど、宗太君は仕方なさそうに笑っただけだった。