空き瓶ロマンス

新しいはじまり




************



それからしばらくして、私は髪を切った。

自分で、鋏を適当に走らせて、ばきばきにしてしまったのだ。

長かった髪が床に落ちた時、何かが楽になった気がした。

母の遺影を見て以来、ずっともやもやしていた気持ちが、すっきりと晴れたのを感じた。


鏡の中にいたのは、ちょっとみちるに近付いた自分の姿。



「ふふっ」
 

何だか妙に嬉しかった。
 

右が長いので、右を切る。

すると今度は左が長くなってしまったので、左を切って……。

とやっているうちに、私の髪はどんどん短くなっていった。


……が、私の散髪を目撃し、悲鳴を上げた兄によって、


私は美容院に連行され、めでたくボブカットヘアーとなった。




そこでも、一悶着あった……。


< 743 / 891 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop