空き瓶ロマンス
「今日は、どういった感じにしましょうか……」
「あ、うんと短くしてください。バッサリと」
「バ、バッサリですか……ええと、どのくらいまでバッサリ行きましょう?」
美容師さんの質問に間髪を入れず、兄が叫ぶ。
「肩まで! それ以上いったら怒るからな!」
「あの、既に肩より短いんですが……」
「うるせー何とかしろよ! 美容師だろ?
妹の美髪を長く蘇らせろよー!」
「で、ではエクステで……」
「ちょっとお兄ちゃん、私は髪を切りたくて来たんだからね!
ベリーショートでお願いします」
「やめろー! せめてボブにしてくれー!」
「ボブって誰!」
「あの、僕は一体どうしたら……」
結局、美容師さんをとても困らせて、兄とよく話し合った結果、ボブに落ち着いた。
『ボブカット』なんていうから、一体どんなけったいな頭かと思ったら、
(正直、名前からしてドレッドヘアみたいなものを想像していた)
何の事はない、ただのおかっぱだった。