空き瓶ロマンス



「――こんばんは、信也さん」
 
ある日私は、信也さんのマンションを訪ねた。
 
理由は簡単。
 
彼に、『そろそろ重箱と空き瓶を取りに来てほしい』と言われたからだった。
 
聞いた時私は、空き瓶? 空き瓶とは何ぞや? 

と首を傾げたのだが、すぐ思い出した。

上着と料理を届けた時に、一緒にレモンのはちみつ漬けを持って行ったのだった。
 

……それにしても、いちいち律儀に『空き瓶』まで言っているあたりが、彼らしくてちょっとおかしい。


「あ、そうだ……いいこと考え付いた」
 

私は、ある人物に連絡して合流し、彼のマンションへ向かった。

一種の悪戯を思い付いたのだ。







「こんばんは」
 
二人で声を揃えて言った時、信也さんはドアを開けて呆気にとられていた。
 

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