空き瓶ロマンス
 


みちるが「このタイミングでカムアウトって……」と笑っていた。
 
咳き込みながら信也さんは、「待て、それは本当か……冗談だろ」と、途切れ途切れに訴えた。


「冗談じゃないです。本当です」
 
みちるが言うと、何故だか信也さんは暗い目をして、みちるにすっと手を伸ばした。
 
何をするのかと大人しくしていたみちるは、胸倉をぎゅっと掴まれ、暴れた。


「ちょっ……!」

「わああ、信也さん! どうしたんですか!」

「信じられない……倫子、君はこいつに騙されてるんじゃないか……?」


「そんな事ありませんって!」


「証拠は?」

「証拠……?」
 

そんなもの、はっきり言って無い。
 

DNA鑑定をすれば一発だろうが、時間も費用もかかるだろう。


何しろ、みちるの戸籍自体が偽物だし、当事者の証言程度しか……。


「証拠なら、あるよ!」
 

突然、みちるが叫んだ。
 
同時に信也さんが、彼を解放する。
 

私は、みちるが嘘を吐いたのではないかと、少し心配になったが、みちるは自信満々に言った。



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