空き瓶ロマンス
そのうち、みちるが「僕の部屋来ない? 一緒に図鑑見よう」と提案してくれたので、
私は喜んで「うん」と返事をした。
その時は、一刻も早くリビングから出て行きたい、と思ってしまった。
ただし、兄と宗太君はリビングに残っていた。
きっと、長子同士何か責任めいたものを負おうとしているのだろう。
大して年の変わらない私達末子は、自分達の立場をいいことに、エスケープを図ったというわけだ。
みちるの部屋は、本だらけだった。
クローゼット以外の壁は、本棚になっていた。
しかも、その本棚というのが、天井に達しそうなほど高い。
地震が起こったら、きっと全部崩れて来るだろうと思った。
「倫子、恐竜好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃ、この本知ってる?」
みちるが本棚から出したのは、子供向けの分厚い恐竜図鑑だった。
「あーっ、懐かしい!」
その図鑑には、見覚えがあった。