空き瓶ロマンス
ずっと昔、図書館で何度も借りて読んだ図鑑だった。
ちょっと黄ばんだ、埃っぽいケース。
今となっては読みづらい、ひらがなばかりの図鑑。
けれども載せられた絵や写真はどれもきっちりとしたもので、けれどもレトロな雰囲気が残っていて、私は胸に不思議な緊張を抱いた。
「いいよね、この、ちょっと凝ってる感じが」
「うん」
みちるがページをめくる。
描かれている恐竜は、絵具で描かれたものらしく、どれも独特の滲み方をしている。
CGなんて無かった時代に描かれたものだからだろう。
何もかも古くて、洗練されていない。
だけど、このくらいが好きなのだ。
「恐竜の絵ってさ、最近、いやにカラフルになったと思わない?」
絵を指差しながら、みちるが言った。
「そうかな?」
「だってほら、この絵見てみなよ。
どれも、茶色だのグレーだのでさ。
今の恐竜、みんな赤とか緑の柄が入ってたりするよ」
「そういえば、そうかもね。
アメリカの映画に出てくるやつとか、そんな感じだった気がする」