空き瓶ロマンス



ずっと昔、図書館で何度も借りて読んだ図鑑だった。

 
ちょっと黄ばんだ、埃っぽいケース。

今となっては読みづらい、ひらがなばかりの図鑑。

けれども載せられた絵や写真はどれもきっちりとしたもので、けれどもレトロな雰囲気が残っていて、私は胸に不思議な緊張を抱いた。


「いいよね、この、ちょっと凝ってる感じが」

「うん」
 
みちるがページをめくる。
 
描かれている恐竜は、絵具で描かれたものらしく、どれも独特の滲み方をしている。
 
CGなんて無かった時代に描かれたものだからだろう。
 
何もかも古くて、洗練されていない。
 
だけど、このくらいが好きなのだ。


「恐竜の絵ってさ、最近、いやにカラフルになったと思わない?」
 

絵を指差しながら、みちるが言った。

「そうかな?」


「だってほら、この絵見てみなよ。

どれも、茶色だのグレーだのでさ。

今の恐竜、みんな赤とか緑の柄が入ってたりするよ」


「そういえば、そうかもね。

アメリカの映画に出てくるやつとか、そんな感じだった気がする」


< 753 / 891 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop