空き瓶ロマンス
カーペットの上に寝転びながら、子供向けの図鑑を眺めて、みちると色んな事を喋った。
今がどういう状況なのかとか、今後私達の関係がどうなるかなんて、重苦しい事は何一つ考えずに。
まるで、来るはずだった幼い日を再現するように……。
もしも、父と母が離婚しなかったら。
母が、みちるを連れて家を出なかったら……。
私とみちるはこうして、日がな一日恐竜の図鑑を眺めて、くだらない談義に興じていたのかもしれない。
そんな、夢が見たかった。
学校やバイトや家事の事なんて、何も考えないでいられる安らかな夢……。
私にとって、こんなに穏やかな時間は久し振りだった。
服にしみついた線香の匂いに、時々ふと現実に引き戻されたとしても。
そのうち、私は眠ってしまった。
……おそらく、みちるはこの間に、私の手や耳を観察したものと思われる。