空き瓶ロマンス



みちるは、気付かずに行ってしまう。
 

靴を履く時に、やっと私が捕まっているのを見て、

ぎょっとした表情になったが、小さく「ごめん」と口を動かし、

「さよ~なら~……」
 
と出て行ってしまった。薄情者!


「あの、信也さん……?」
 
くいくい、と引っ張られたのでそのまま座ると、信也さんは突然私の髪に触れた。

「……短い」

「そりゃ……切りましたから」

「そうか……」
 

彼の手が、頭をそっと撫でるように動く。

私やみちるの手とは違った、大きくて無骨な手だ。

不思議と、とてつもない安心感があったので、大人しくされるがままになっていたが、


そのうち彼は、はっと我に返ったように手を下し、うやうやしく言った。


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