空き瓶ロマンス
『そういえば私、来年は別の学校に飛ばされるじゃない?
ほら、校内に先生が夫婦でいるのは駄目な決まりでしょ?
で、私が飛ばされるんだと思うんだけどね、
別の職場になっても、すぐ産休に入っちゃうかもしれないの~!
まあ、それはしょうがないのかしら?
まあ悩んでもしょうがないとして、プレゼントよね?
うんうん……』
長谷川は、思った事をそのまま喋っているようだった。
信也は適当に相槌を打ちながら、ぼんやりと八ヶ月後の事を想像していた。
あの小野が、父親になるのか……。
神経質で潔癖症で、テレビに泥遊びをしている子供が映るだけで、
顔を引き攣らせていた、あの小野が……。
(いや案外、自分の子には甘くなるのかもしれないな……。
この前も小野が楽器のカタログで、
子供用のバイオリンのページを指で押さえたまま眠っていたと、長谷川が言ってたし……)