空き瓶ロマンス



「何があったか、話してくれる?」
 
私が尋ねると、みちるは少し考えるように首を傾げた。
 
そしてみちるは考えがまとまったのか、しばらくすると立ち止まって、溜め息を吐いた。


「……やっぱ、やめた」

「何を?」

「倫子には内緒にする。

……だってこれ、完全に愚痴だし」

「愚痴だって、私は聞きたいよ」

「みっともないし」

「みっともなくない」

「……僕、男だし」

「男だから何なの」

 
そこまで言うと、みちるは笑いながら私の頭をぽしぽし叩いた。


「な、なに?」

「何でもない。……なんか、ごめん。

最近、ちょっとおかしいんだ、僕」
 
みちるの言葉は、ひどく自棄っぱちに聞こえた。


「……家、来る? 

今からじゃ、大したもの作れないかもしれないけど」


「ううん。この後、別の人と約束あるから……」


< 777 / 891 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop