空き瓶ロマンス
 


彼は突然、意味ありげな含み笑いをした。

片方の口の端を上げた、器用な笑い方……。
 
瞬時に、これは! と思う。


「え、もしかして彼女!?」
 
つい大声で言うと、しーっと人差し指を立てられた。

やっぱりそうだ!

「さあ、どうでしょう?」

「あれ、でも前『いない』って言って無かったっけ? できたの?」

「えへへ、秘密だよ」

「こら、白状しなさい、みちる!」
 

みちるは、正直あまり男の子っぽくないと思う。

私に似ている分、女っぽい、というのが兄の弁だ。
 

だけど、繊細そうなみちるの容姿で、

しかも共学なのに彼女がいない、というのはおかしい、と思っていたのだ。


どんな子だろう。
 

私は、逃げるみちるを追いかけながら、ちょっとした期待に胸を膨らませていた。



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