空き瓶ロマンス



修とは実の兄弟であるはずだったが、未だに彼を『兄』とは認識出来ないのかもしれない。
 

それでも、喧嘩中の宗太の事を頑なに『兄さん』と呼ぼうとしているみちるに、

信也はある種のいじましさを感じた。


「……で、修さんの面白い話っていうのは?」

「聞きたいのか」

「ここまでいって聞かせないなんて、あんまりですよ」

「……しょうがない」
 

信也は、大人しく口を割った。



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思い出しながら、どいつもこいつも、うちを避難所代わりにして……と内心舌打ちする。
 

それは、修が「失恋した」と、大量のビールや缶チューハイを携えて、

泣きながら乗り込んできた時のことだった。


アポ無しで、しかも信也の元に来た時、

既に酒臭かった修を帰宅させるのは困難だったため、仕方なく泊めたのだった。
 

実はその時、信也も缶ビールをあけたばかりだったのだ。

飲んでさえいなければ車くらい出した。



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