空き瓶ロマンス



結婚式は、お客様にとって一生に一度の大イベントだ。


例外はあるだろうけど、失敗が許されないという意味においては同じである。


だから、バイト中はとにかく気を遣う。


表情や、言葉遣い一つとっても、油断しているとすぐにどこかで見ていたらしい社員さんからお小言が飛んでくる。


精神も体も、くたくたになる。
 

だから、私がきっと知らないうちにヘマをやらかしたのだろう。
 

そう諦めようと――年長者たる大川さんの意見を仰いだつもりだったのだが、


彼女からもたらされたのは、意外な話だった。


「……私、さっき二人の話を、ここで聞いてました」
 

大川さんは、手を片時も休めずに、淡々と言った。


その様子に何やら秘密めいた不穏なものを感じ取り、私は畏まった。


「二人、とは?」


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