空き瓶ロマンス
視界が小刻みに揺れた。
鼻の奥がつんとなった。
悔しかった。
そんな程度の事で、怒鳴られたのかと思った。
八つ当たりどころか、恩を仇で返されたようだった。
そんな私を見た大川さんは、
「……でも、私はあなたが正しいと思うわ」
ぽつりと、言ってくれた……。
「……トーション、新しいやつ持ってきます」
私は、食器の水気でぐずぐずになったトーションを握りしめ、バックヤードに向かった。
大きな冷蔵庫や、ラックや、色々なものが納められた棚の隅に蹲って、泣いた。
卑怯者、卑怯者、言いたいことがあるなら、直接自分の口で言えばいいじゃないか……!
私は好意で言ったのに、どうしてそれを素直に受け止めてくれないんだ、僻むんだ!
悔しくて、情けなくて、疲れて頭が混乱していた事も手伝って、私は声を殺して、泣いた。
けど、泣いたことをあの二人にだけは絶対に知られたくないと思い、必死でそれを拭った。
これ以上涙が出ないように、耐えた。