空き瓶ロマンス
 


そして、汚れたトーションを袋に放り込み、新しいトーションを数枚掴んで、厨房に向かった。


何ごとも無かったように。精一杯、毅然と胸を張って……。
 

その後、終わりのミーティングで、社員さんに次のシフト組みで予定を聞かれた時、


私はうっかり簡単に「辞めます」と口走っていた。
 

その場の全員が、「えっ」と大声を出した。


「ど、どうしたの急に!」
 

社員さんがあまりにもうろたえてしまったので、私もそんなに大ごとなのかな……と思いつつ、あれこれと理由をつけた。


「すみません、ここのとこ、家庭や学校の方が忙しくなってきちゃって……もう無理かなって」
 

私の家庭事情を知っていたその社員さんは、すぐに予定表を抱え、


「分かったわ、ちょっとオーナーに言って来る」と、バイト控室を後にした。


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