空き瓶ロマンス
 


着替えてほどなくして、事務所に呼ばれた私は開口一番、


「今までお世話になりました」


「ちょっちょ、ちょと待って! 


今すぐ辞めるって決まったわけじゃ……」


「いいえ、本当に申し訳ないんですけど、私、これ以上働く自信が無いんです……!」
 

オーナーはこっそり私に近付き、声をひそめて、


「……もしかして、信也の関係?」


「いいえ! そっちは関係ありません!」


「じゃあ、あっちは順調ね?」


「……ええ、まあ……」
 

順調、などと言われると、ちょっと恥ずかしくて答えに困る。
 

しかし、オーナーは私の顔をじっと見つめ、


「その赤い目は、ついさっき、って感じね。


……何かトラブルでもあったのかしら?」


「………トラブルと言っていいのかどうか」


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