絆
俺は文芸部員の顔を思い出す。
…N?
Nって誰だ?
誰一人として、Nを思い出すことができない。
彼女に会うためだけに通ってはいたが、他の部員を覚えていないわけではない…はずだ。
「教えてくださいよ、Nって誰なんですか?」
先輩はすでに爆笑の中にいた。
俺に付き合っていても仕方がないと判断されたらしい。
何やら盛り上がるそちらをよそに、俺は秘かにグラスを傾けた。
「なにまた一人で黄昏てんだよ?
おまえもこっちに入れ」
同期のサクラが俺を呼ぶ。
「そうだよ、じゅんじゅん」
「お、懐かしいっすね、そのあだ名」
張本人の俺を差し置いて、あだ名の話題が盛り上がる。