絆
「なんでそれになったんだっけ?」
「あれだよ、古谷くんが、『北の国から』の『純』くんに似てるから、だよね?」
彼女まで、話題に参加している。
諦めて俺は頷いた。
「で?本名はなんだっけ?」
さっきから、先輩ひど過ぎやしませんかね、と言いたいのを堪えて、俺は言った。
「直也ですよ、な・お・や!」
言って気付いた。
そうか、Nって……
「気付くの遅いし、じゅんじゅん」
狙っていたくせに、敢えてそう言う先輩の呆れ顔はもう、目には入らなかった。
深い後悔と妄想が俺を襲う。
あのとき、気持ちを伝えていれば、あるいは今彼女の隣りにいたのは俺かも…
いやむしろ今頃は結婚していたかもしれないのだ。
………さらば、青春。
俺はもう何杯目になるか知れない酒を呷った。