絆
傘と…
何か問題があったらしい。
本能でそう覚った。
一瞬にして空気が緊迫する。
拭い去れない不快感を背中に感じながら、退路を探す。
振り返った視線の先に、地獄を見た。
真っ黒に煤けた塊が崩れ落ち、鼻を突く匂いが漂っている。
それは、少し前までは自分と同様に生命の反応があったはずの個体だった。
辛うじて、かつてそれが人であったことが分かる程度まで、変わり果てた姿だった。
瞬間、耳を劈く断末魔の叫び声が聞こえた。
吐き気を堪えて声の方へ進む。
夥しい死体の山の中に、泣きじゃくる少女がいた。